あの有名なホーソン工場で行われた実験から生まれた主張があります。
労働者の心理状況や人間関係が生産性に影響するという内容です。
さらに、組織の成功循環モデルによると、関係の質が思考や行動に影響し、組織の成果を向上させることができます。
一方、悪循環では結果の追求に偏り、関係の質が悪化し、成果が低下してしまいます。
このように心理的安全性は組織の質全体に大きな影響を与える重要な要素です。
関係の質を改善することで、組織のパフォーマンスを向上させる近道となるのです。
こんな主張をご存知でしょうか。
「そもそも人間は、社会的な生き物であり、賃金や就労時間といった個々の要素で一面的に労働者の心理を測るのではない。ゆえに、人間関係全体と個々人の就労態度を慎重に研究すべきである」
これは、あの有名なホーソン工場でエルトン・メイヨーらが行った実験についての主張です。
簡単に主張をまとめると、労働者の心理状況や個人的な人間関係が、生産性(パフォーマンス)に影響があると言っているのである。
主な実験として、照明実験、組立実験、面談実験、バンク配線作業実験がある。
これらの実験結果から、人の物理的な環境だけでなく、感情や意志、他者との関係が生産性に影響すると言っているのである。
ここからあの有名な理論が生まれました。
組織が成功を上げ続け、成功に向かう仕組みはどうなっているのか。
気になりますよね。
これは組織の成功循環モデルと言います。
有名な理論なので、ご存知かもしれません。
簡単に説明すると、組織に所属するメンバー間の「関係の質」が高まると、「思考の質」が高まり、それが「行動の質」につながって、よい結果を生み出すメカニズムです。
それによって更にメンバー相互間の信頼が高まり、関係の質が向上するとされています。
このメカニズムの好循環が成功への原動力を高め、組織に持続的な成長をもたらすとする理論です。
従って、組織メンバー間の関係を見て調整することが大事であることが理解できると思います。
ちなみに、この組織の成功循環モデルには、先ほど見た好循環と悪循環があります。
好循環(グッドサイクル)は、こんな感じです。
関係の質:チームの関係性が良く、お互い認め合っている。
思考の質:関係性が良いので、対話を通して良いアイデアがわいたり、助け合いの思考が自然と生まれる。
行動の質:助け合いから、積極的かつ効果的な行動が生まれる。
結果の質:質の高い行動により、売り上げや利益などのチームパフォーマンスが向上する
関係の質に戻る:良い結果により、チームの関係が良くなる好循環になる
この好循環(グッドサイクル)の特徴は、「関係の質」を高めるところから始めている点です。
そこからメンバーの相互理解が深まり、お互いを尊重し、気づきを得ることで、「思考の質」が向上します。
そしてオモシロイと感じる場面が増え、メンバー自らが自発的に考えて積極的に行動を起こすようになり、「行動の質」も向上します。
その結果として、「結果の質」が高まって成果が得られ、その実績が再びメンバーの信頼関係を強化し「関係の質」がさらに向上するサイクルとなります。
では、組織の悪循環はどうなるのでしょうか。
まずスタート位置が違います。
「結果の質」から始まります。
よくありますよね。
役員会議、営業会議などなど、多く見かける場面です。
結果だけを追い求め、目先の数字を向上させることのみに執着し、思うように結果が出ない場合は、以下の悪循環になります。
結果の質:売上や成績が下がる
関係の質:上司と部下の間や、部門間の関係が悪化する
思考の質:責任のなすりあいや、失敗を恐れる思考になる
行動の質:部分最適の行動や消極的な行動が生まれる
結果の質:さらに売上や成績が下がってしまう
いかがでしょうか。
私が見てきた多くの会社では、この悪循環を解消するために、ついつい「結果の質」から
改善を取り組みます。
しかし結果の質から動かそうと思ってもなかなか動かないものです。
そしてこの結果の質が低下すると、何とかしなければいけない!と奮闘するのですが、結果がついてこず、押しつけやパワハラ、または不正会計にまで及ぶこともあります。
マイクロマネジメントが強くなり、心理的安全性の土台が崩れてしまい、関係の質が悪化し、メンバーは言われたことだけやるリスク回避体質になり、自ら考えることを放棄してしまいます。
そうなるともはや修復は難しいです。
自発的、積極的な行動を臨むことはできません。
そのため、行動の質が下がり、成果も出なくなります。
いかがでしたか?
好循環をもたらすためには、「関係の質」から手を入れるべきなのです。
この関係の質を改善していくことが、遠回りのように見えて、近道であると、ダニエル・キムは論じています。
このように心理的安全性は、関係の質を始めその他の質にも大きく関係していることがわかりますね。